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マリッジリング

映画やものの本で、いろいろな臨死体験
があるのを知っていた。

また「臨死体験のほとんどが、今そこ
にある苦しみや痛みから逃れるため、
脳が作用して見せる幻覚」と聞く。

私の場合は、とてもコミカルであった。
臨場感があり音響も素晴らしく、
いまだに鮮明である。

そこは劇場。自分一人が観客で、
自分の人生の早送りを見ている。
大きな声で自分を声援し、
ときには手を叩き、笑っている。

そんな中、突然、交通事故に遭い、
トントントンと音をたてて幕が下りた。
幕の最後には「おしまい」と
書かれている。

舞台から年配の女性が現れ、
私に説明を始めた。

「あなたの人生が今終わりました。
 本当にご苦労様でした」

と、一瞬目が点になった私、

「ちょっと待ってください。
 今の交通事故で、私は死ぬんですか。
 納得できません」

と反論。女性は

「交通事故の場合、皆さん、
 そう言われるんです」と。

私は

「その後を見る事は出来ないのですか?
 できればぜひみたいのですが」

と哀願した。女性の困惑した顔が
すーっと遠のいていった。

呼吸が出来ない苦しさと
身体全体に走る激痛、
事故車両の中で気を取り戻した私は、
今見た幻覚が余りにも鮮明であったため
「私、死ぬんだ」という思いが
頭をよぎった。

救急車の中、手術台の上、
意識が遠のいていく中、

「死ぬことを妻に連絡しなければ
 ならない」

そして

「今までのお礼を言わなければ
 ならない」

と、そのことばかり執着し、
頭の中でバニックを起こしていた。

集中治療室で意識を取り戻したのは、
事故発生から三日経ってからだった。

主治医が私を起こし

「いいですか。今から人工呼吸器を外し
 ますので自分で息をしてくださいよ。
 わかりますか」

と言った瞬間、機械が外され、
慌てて呼吸を開始し初めて
生還したことを悟った。

数分も経たないうちに妻と息子が顔を
出した。二人とも満面に笑みを浮かべ、
そして泣いていた。

妻は「お父さん、もう大丈夫だからね、
先生が思ったより早く治るからねって!」
と手を握っている。

私は何年かぶりに家族と再会したような
感覚になり、涙が溺れ出した。

妻に「死ぬよ」という連絡の必要は
なくなり、「お礼」も当然言わなくて
いい状況になっていたが、何かを妻に
伝えたかった。

事故発生から五十二日目に退院した。
妻は五十二日間、私の手足となり、
回復の最短距離へと誘導してくれた。

いつも笑いながら、
「お水が飲めたね」
「トイレまで歩け鹿ね」
「お風呂に入れたね」と、
子供の成長を喜ぶように。

あのとき死んでいたら、この妻の笑顔を
見ることが出来なかったんだ。

妻は私といて幸せだったんだろうか。
仕事々々で家庭を二の次にしていた私。
ずいぶんと寂しい思いをさせていた。

あのとき死んでいたら、
間違いなく妻を不幸にしていた。
死ななくて本当によかった。
まだ間に合う。

かと言って、
あらためて何を妻に伝えればいいのか。

「今まで本当にありがとう。
 またこれからもよろしく」

これでは足りない。二十四年前、
お互いに交換した「マリッジリング」が
タンスに眠っている。指にはめてみた。

妻と一体になった気がした。

突然の不可解な行動に妻は首をかしげて
いたが、数日後、妻の指にも同じものが
光っていた。とても嬉しかった。

妻に言葉はいらなかった。

アカシアの花がデザインされている
マリッジリングをあらためて見つめた。

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うーん、いい話ですねぇ。

二人の長い年月があったからこそ、
言葉無くても強い思いが
伝わってたんでしょうね。


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